皇族数確保に向けた与野党の協議が詰めの段階に入っている。衆院議長らは今国会中に「立法府の総意」を取りまとめたい意向だが、公開された議事録からは、重要な視点の欠如が浮かび上がる。かつて、女性・女系天皇への道を開く皇室典範改正に動いた小泉純一郎内閣で、内閣法制局長官を務めた阪田雅裕弁護士(81)が朝日新聞の取材に応じ、「根本に立ち返るべきだ」と語った。
――皇室制度の大転換につながる可能性があった2005年、内閣法制局長官でしたね。
「今でも皇室制度には深い思い入れがあります。長官就任前から内閣法制局の一員として典範改正の作業に関わり、宮内庁とも議論を重ねました」
2005年、小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が、女性・女系天皇を認める報告書をまとめ、小泉氏は、皇室典範の改正案を国会に提出する考えを表明した。「男系男子」に限る皇位継承資格を拡大し、愛子さまの即位を前提としたものだった。
――ただ、06年2月に秋篠宮妃紀子さまの懐妊が公表され、皇室典範の改正案を国会に提出することは見送られました。
06年9月、秋篠宮ご夫妻に、皇室では41年ぶりの男子となる悠仁さまが誕生したが、皇室の先細りを一気に解消するものではなかった。08年には羽毛田信吾・宮内庁長官(当時)が、天皇陛下(上皇さま)が「将来にわたる皇統の問題」などを憂慮していることを明らかにした。
「思いもよらないことでした。衆院予算委員会の最中、小泉首相の元にメモが届けられましたね。何事にも動じない小泉首相がご懐妊を知って驚いた表情は今でもよく覚えています」
――制度改正に向けた議論は長らく止まっていました。現在、未婚の皇族方6人のうち5人は女性です。皇室に悠仁さましか残らない可能性もあるまま今に至ります。
「詳細な検討を重ね、典範改正に至るまであと一歩というところだったのに、そこで議論をやめてしまったことは本当に惜しいことでした」
「これは想像ですが、当時の…